広瀬隆講演会「日本を滅ぼす原発震災」の報告

 4月10日、大阪平和人権センターをはじめとする関西の反原発団体の呼びかけで開かれた「日本を滅ぼす原発震災」(広瀬隆講演会)に参加しました。その報告をします。
 講演会は200名以上の参加、満員で入れない人も多数いました。同じ内容で午前と午後開いていました。今回の原発事故、原発震災に人々がどれほど大きな関心を持ち、怒っているかを感じました。
 集会では実行委員会を代表の短い挨拶のあと、さっそく広瀬さんに講演していただきました。以下、その報告です。

①政府と東電のマスコミ統制によって、何一つ真実は明らかにされていない。
 地震と津波は天災といえるかも知れない。しかし、今回の原発事故は人災です。その危険性を早くからいく人もの人が指摘してきたのに、全く根拠のない「安全性」を唱え、営利第一のために警告を無視してきた政府、東電の無為無策の結果です。
 今彼らは、これを隠そうといろいろ画策しています。
 マグニチュードの変更がおかしい。当初の気象庁の発表が8.3から8.4になり、9.0になった。ものさしを変えて、大きく見せる操作がされている。8.3、8.4であれば100年ごとに起きている。想定内でなければならないことだ。田老地区の津波は明治三陸地震(1896年)の方が大きい。
 今、政府、東電の言っていることは、想定外の巨大地震が起こり、津波のため予備の電源が失われた。だから原発は地震でどこも壊れなかったにもかかわらず、冷却材がなくなって今日の事態に至ったのだ、と。しかし、これは根本的にウソだ。
 福島第一原発の4号機の設計者である田中三彦の話によれば、データからみるかぎり、地震直後に1号機は配管が破壊され、ウラン棒を冷している冷却水がなくなったと推論できるそうです。津波がなくて電源が失われなくても、今日の事態はおこっていたという。福島原発の想定している揺れの大きさは270ガルで設計しているが、実際には、今回は550ガルでゆれた。柏崎刈羽原発の地震では2000ガルが記録された。
 今回の震災は、地震学者が皆危険だというのを無視し続けてきた政府、東電の起こるべくして起こした結果だ。(詳しくは、岩波書店『世界』5月号)
 天災ではなく、人災だというどころではない。「未必の故意」による「殺人」だ。100万kWの電気出力を得るには原発で330万kWの熱出力をしなければならない。3分の2の熱を捨てるー排出する必要がある。これが冷却水の問題です。膨大な量の水が必要です。だから原発は海岸沿いに建てられる。
 事故を起こした原発を直せるのは、運転している人ではなく、それを作った人です。車を運転する時と考え方は同じです。福島1号機、2号機はゼネラルエレクトリック(GE)社が作った。原発事故直後にアメリカは(GEは)協力を申し出たが、菅政府、東電は断っているのです。冷却材を送るというのも断っている。事故2日目には菅首相の福島原発視察のために排気作業を半日以上遅らせ、水素爆発を起こしてしまった。海水を投入すると廃炉になるからといって、投入を遅らせ、今日の深刻な事態を招いてしまった。いろいろな意味で人災だ。
 今もっとも危ない原発は、浜岡原発(静岡県)です。砂丘の上に建てられ、防波堤もありません。浜岡原発の津波の想定は、8.3mです。今回の東日本地震では最大37.9Mの津波が来ています。福島と同じことが今にもありうるのです。
 石橋克彦さんという地震学者が1997年から「原発震災」の危険性を訴えてきました。福島はその予測通りになっている。近々講演があるので、よく聞いてください。

 ②被曝について、「1時間に1ミリシーベルトで、これで1年間に人が浴びる許容量を超える」というような言い方をするが、これはトリックだ。1時間に1ミリシーベルトであれば、24時間×365日=8760。8760倍とはっきり言うべきである。1万倍近い放射線を浴びているのだ。
 もっとこわいのは内部被曝です。口から内臓や肺に入った放射性物質は放射線を出し続けます。その大きさは距離の2乗に半比例するから、何万倍もの放射線となります。細胞にくっついた放射性物質が細胞をガン化するのです。

 ③次の原発震災がせまっている。
 浜岡原発は福島以上に危険です。いつ大震災になっても不思議ではない。私はおびえています。直ちに運転を停止すべきだ。